USPとは

世界的ブランドを創る起爆剤となったUSPという伝達技法

USPは、「Unique Selling Proposition」の略で、古くからある広告技法です。USPを定義したのは、アメリカ広告業界の巨匠ロッサー・リーブス(以下リーブス)です。

彼は、広告代理店テッドベイツ社会長で、第38代アメリカ合衆国大統領ドワイト・アイゼンハワーの選挙参謀でした。また、数々の歴史に残る広告キャンペーンを成功させました。
彼が得意としたのは、薬・食品・タバコなどのパッケージグッズ(包装商品)の分野で、特にテレビを使ったマスメディア広告にUSP技法を活用して成功を収めた、まさに情報伝達の達人です。

その背景には、「広告は売上を上げる手段である」という彼の哲学と、目的を達成するために科学的に広告を研究したという点が挙げられます。

広告の世界にも「芸術性を訴える」「セールスマンシップが重要だ」など様々な流派があります。彼が典型的なセールスマンシップの流れを汲んでおり、リーブスがまとめた研究成果であるUSPの原理を次のように述べています。

He defines the USP in three parts:

1.Each advertisement must make a proposition to the consumer. Not just words, not just product puffery, not just show- window advertising. Each advertisement must say to each reader: ‘Buy this product and you will get this specific benefit.

2.The proposition must be one that the competition either cannot, or does not, offer. It must be unique -- either a uniqueness of the brand or a claim not otherwise made in that particular field of advertising.

3.The proposition must be so strong that it can move the mass millions, i.e., pull over new customers to your product.

1.広告は、消費者に向かって主張すべき点がなければならない。言葉を並べるだけ、言い広めるだけ、また、ショーウインドー的な広告であってはならない。読者にこう呼びかけるべきだ。
「この製品をお買いなさい。そうすれば、あなたはこんなに良い点を得ることになるはずだ」

2.その主張は、競合が主張していないものか、それとも主張しようとしてもできないことでなければならない。

3.その主張はパワフルであり、多くの消費者を自社製品へ引き寄せるものでなければならない。

ロッサー・リーブス著
『Reality in Advertising( 広告の真実 )』
(1961 年)より引用

リーブスが語っている情報伝達に関する原理原則はこれだけに留まりませんが、中心となる概念はこの3つで、実にシンプルで力強いものです。ビジネスにおいて我々が考えるべき差別化のエッセンスが詰まっているではありませんか。

リーブスは、主にマス広告にUSPを利用して圧倒的な成功を収めました。テレビは情報伝達手段としてパワフルな媒体ですが、中小企業がテレビCMを打つことは予算の関係上難しいといえます。
しかし、テレビCMが商品販売の情報伝達手段ということを考えると、リーブスが体系化したUSP理論の普遍的なエッセンスは応用できる部分が多いのです。更に言えば、Youtubeなどの動画コンテンツインフラの台頭により、中小企業でもテレビCMに匹敵する映像コンテンツを、地域を限定して打ち込めるというありえない環境が整ったのです。

今までテレビという巨大な大砲を使い、戦略的、且つ包括的にWebマーケティング、リアルマーケティングを指揮・采配していたのは、P&Gのような代表的なメーカーで活躍するマーケティングが得意な人材、もしくは大手広告代理店の優れたマーケティング支援者に限られていました。

しかし、私達のような中小企業に軸足におくマーケティング支援者にも、「動画映像」「Webマーケティング」「リアルマーケティング」を包括的に活用し、戦略に則った中小企業支援が可能になりました。これらの具体的手法が、「USPマーケティング®」であり、その第一歩がUSP作成です。

これこそが、その商品だけが持つ、伝えるべき輝き(価値)を浮き彫りにする作業になります。真の差別化手段であるUSPづくりは大変重要なのです。

それでは、USPをどのように活用するのか。

次から、皆さんもご存じの製品が、USPを活用してどのようにマーケティングしているのかを説明します。

あの世界的なロングセラー大ヒット商品もUSP!

ロッサー・リーブスはUSPによって大ヒット商品を生み出しています。

「お口でとろけて、手でとけない」

このUSPメッセージによって、M&M'sの大ヒットは生まれ、世界的なブランドとなりました。

広告には主張する点(訴求点)が重要だといわれています。しかしながら、その訴求点の多くは、他の商品が持っている特長やベネフィットに似通っています。つまり手垢がついた主張です。

時は半世紀以上前に遡ります。
M&M'sチョコレートを生み出したアメリカのマース社。創業経営者のひとりであるジョン・マクナマラ氏は、当時自信作であるチョコレートがもっと売れる方法を模索していました。ジョン社長は、ロッサー・リーブスを訪ね、「もう広告は続けたくないんだ。もっと売れるアイデアが欲しい。」と、リーブスに相談を持ち掛けました。

リーブスは話をくなかで、今までの広告が商品とかけ離れていることにすぐ気づきました。
このチョコレートの最大の特徴は、表面にシュガーコーティングが施されていることでした。にもかかわらず、広告ではその特長やベネフィットを伝えていなかったのです。

そこでリーブスは、ジョン社長の目の前で簡単な実験をやってみることにしました。
実験は、当時一般的だったチョコレートと、M&M'sチョコレートをそれぞれ左右の手の平にのせて握るだけのものでした。

しばらくして握った手を開いてみると、一般的なチョコレートは手の中でドロドロに溶けていました。しかし、M&M'sチョコレートは溶けることなく元の形のままだったのです。

当時のチョコレートは温度が高くなると手の中でドロドロに溶けてしまう製品が当たり前で、お客様は、食べるたびに手が汚れてしまうことに少なからず不満を感じていたのでした。リーブスは、M&M'sチョコレートの持つ特長がこの不満を解消できることに着目し、実際にニーズがあることを証明してみせたのです。しかも、当時のアメリカでは、表面を砂糖でコーティングするチョコレートはこの商品だけでした。

この結果に感嘆したジョン社長は、リーブスに商品のプロモーションを依頼し、あの有名なキャッチコピー『お口でとろけて、手でとけない』を「選ばれる理由」としてプロモーションを展開していきました。
M&M'sチョコレートは、多くのお客様に支持され瞬く間に浸透し、やがてマース社は世界的企業へと躍進を遂げます。

後にリーブスは、ジョン社長が「もっと売れるアイデアが欲しい。」と言っていたことについて、「アイデアは既に商品の中にあった」と語っています。USPとは、商品の特長を理解し、そこに存在するアイデアに光を当て、ターゲットにするお客様へ伝わるように言語化することです。
そして重要なことは、必ず「USPの3つの定義」が網羅されていることです。

これ以外にも、リーブスはUSPにより数多くの企業の広告キャンペーンを成功させ、小さかった広告会社を世界4位の代理店へと押し上げました。広告の殿堂入りを果たすほどの功績により、今なお後世のマーケターに多大なる影響を及ぼし続けています。

Dyson社の成功事例

広告はもちろんのこと、情報発信する媒体、既存顧客や潜在顧客と接触するあらゆるマーケティング活動でUSPを発信すべきです。その好例として、実際にUSPを活用した企業のマーケティング手法をご紹介します。

掃除機メーカーの「ダイソン」は、後発で日本市場に参入し、掃除機という成熟商品で価格競争が厳しいカテゴリーの中で、高価格帯のブランドとして大きな成功を収めました。

ダイソンのUSPは次の通りです。

「吸引力の変わらない、ただひとつの掃除機」

この主張をテレビCM、カタログ、Webサイトなどあらゆるマーケティングコミュニケーションに活用しています。実際に使われていた場面は次の通りです。

テレビCM、Webサイト

「吸引力の変わらない、ただひとつの掃除機」というUSPメッセージを伝達するために、テレビCMやWebサイトを利用しています。
Webサイトでは、トップのメインビジュアルでUSPを使っていました。

実際のコピーは次の通りです。

紙パックを変えたばかりでも
フィルターを掃除しても
他社の掃除機はすぐに目詰まりし吸引力は急激に落ちていきます

ダイソンは違います
その秘密は、ダイソン独自の特許技術
ルートサイクロンテクノロジー

吸引力の変わらない、ただひとつの掃除機

2006年12月時のWebサイトより引用
http://www.dyson.co.jp

カタログ、パンフレットなど販促ツール

電化製品取扱店に置かれているパンフレットやカタログの表紙でもUSPを訴求しています。

USPが記憶に粘り頭から離れませんでした。カタログを見ていて欲しくなったのを覚えています。

USPが伝わることでマーケティングパフォーマンスが上がり、ブランドが短期間で創られる可能性が高まるのです。

短期間でトップクラスに成長した日本の成功事例

日本市場の事例も紹介したいと思います。
15年ほど前から本格的にUSPマーケティング®を取り組んできた中で、私の力不足で失敗もかなりありました。ベストを尽くしたつもりですが、たくさんの失敗もあった中での成功事例です。ご縁をいただいたクライアント様には感謝の気持ちで一杯です。
関わらせていただいた数百案件の中でも、比較的永続性があり、大きく成長をされた事例を紹介したいと思います。

経営はたくさんの要素がありUSPはその一つにすぎませんが、差別化戦略を担う大きな要素といえます。

他社とは違う!ニッカホームはこだわりの自社施工

1つ目は、リフォーム業の事例です。リフォームは建築業界に属します。
15年ほど前にWebサイトのプロデュースプロジェクトを旗振りをさせていただきました。現在では、名実共に日本一といってもよいリフォーム会社の事例です。リフォーム業界では、営業は社内で、 受注後は外注職人が施工するというのが通例です。
ニッカホーム様は、職人を内製化していたのが特徴であり持ち味でしたが、当時はその価値が全然伝わってい なかったので、その点をストレートに訴求したのです。

現在のWebサイトでも当時の訴求点を活用していただいています。リフォーム業界の中では、名実ともに日本一といってもよい企業です。

ネジザウルスならいろんなネジがはずせます

2つ目は、工具メーカーの事例です。
工具は年間1万本も売れたら大ヒットという市場です。

そんな中、累計500万本も売れ、今なお売れ続けている大ヒットロングセラー商品となりました。つぶれたネジをはずすという特徴をもった工具のベネフィットをシンプルにしっかりと伝えました。

日本一つぶれないから、ずーっとふわふわ!

3つ目は人工芝メーカーの事例です。当時、人工芝メーカーの殆どが、見た目のリアルさを競っていました。そんな中、同社の人工芝の特長は復元性だったため、その点を訴求しました。耐久テスト等で、主張の裏付けもしっかりと確保しました。
関わって5年ほどが経ちますが、当時開発した訴求点を今でも活用していただいています。年商は、当時2,400万円でしたが、現在では15億円を超えました。
人工芝を取り扱うエクステリア業界の大手商社カタログにも掲載されるようになりました。
人工芝市場が成長期前のタイミングで参入し、人工芝のトップブランドへ短期間で成長しました。これからも品質を維持改良していけば、トップクラスのブランドとして市場の成長と共に更なる成長が見込まれます。

90%ツボ押しの店。手もみが少ないから肩こり腰痛に効く

4つ目は地域密着のリラクゼーションサロン店舗ビジネスの事例です。
地域密着の場合は、地域No.1になることが1つの大きなゴールです。
当時は1店舗しかなかったこのお店は、USPメッセージを開発し、わずか数年で同エリア1番の多店舗展開をすることに成功しました。この手の業種は優秀な人材確保も重要ですが、求人にも大きく貢献しています。

このようにUSPは、中小企業の短期的な集客、売上アップはもちろんのこと中長期的なブランド作りにも大きな貢献をするのです。